久しぶりに大作読んだので読書の書庫を更新。
小川哲「地図と拳」
「君は満洲という白紙の地図に、夢を書きこむ」
日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野……。奉天の東にある〈李家鎮〉へと呼び寄せられた男たち。「燃える土」をめぐり、殺戮の半世紀を生きる。
2018年から昨年まで3年に渡って小説すばるで連載されてた作品。
ここ数年では個人的に一番注目してる作家だけど、600ページ超のページ数に恐れをなして、発刊から3ヶ月以上たってようやく読了しました。
著者の過去作の「ゲームの王国」のようにジャンルとしてはガルシア・マルケス風のマジックリアリズムになるのかな。
内容は明治から第二次大戦後まで満州の架空の街を舞台にした群像劇。
登場人物も多く、それぞれの視点でその間の国際情勢や戦争、思想、建築、都市計画などの多岐にわたる要素が描かれてます。
血沸き肉躍るハラハラドキドキ感はなく約50年の時間の流れを淡々と描写。
タイトルの地図や拳は物語の軸というよりはそこで描かれている街の象徴的な存在としてチョイスされてる気がしました。
読んでる最中は興味深くてどんどんページをすすめれましたが、リアルに近づけようとした分、物語としての抑揚みたいなのは薄めだったかな。
もう少し惹きつけられるような謎とかどんでん返しみたいなのがあった方が満足感得られたんじゃないかと思います。
謎自体がないわけじゃないけど、割とあっさり風味なんでページ数を考えると、肩透かし気味かもしれません。
まあ、その部分が作品のメインテーマではないとはいえ、エンタメ的にはもう一押し欲しかった。
それでも、年末の各種ランキングではたぶんそれなりに上位にくるくらいの予感はあります。