小川一水「時砂の王」・・・ハインラインの偉大さを再認識

すっかり更新をさぼってる、この読書の書庫。

ま、もともと訪問者も少ないとこなので、気にもなってないとは思いますがイジイジ・・( ..)( __)イジイジ・・


でも、本自体はむしろ結構読んではいます。

ただ、今年の春先に「久々に長編の時代物でも読みたいなぁ」と思って、手に取った佐伯泰英の時代小説にどっぷりはまってしまい、ほとんどそればっか読んでたんで。。(;^_^A アセアセ・・・

以前も記事にした「居眠り磐音」シリーズ(今のとこ22冊)や「密命」シリーズ(今のとこ17冊)は出てる分は全部読み終わり、今は「酔いどれ小藤次」シリーズに夢中・・・ってな具合。


いやぁ、どれもこれもステレオタイプな剣客ものなんだけど、読み出したら止まらない~。

江戸の町の様子とかが生き生きと描かれてて、自分もその空気をすってるような気になります。

予定調和なストーリーなのに、なんでこんなにハマってしまってるのか自分でも不思議なくらい。

でも、それが心地いいってことは、やはり日本人の奥底に流れる精神とかの影響なのでしょうか。



そんなこんなで、このところ時代小説ばかり読んでたんだけど、先日、「たまには他のでも読もうか」と考えてたところで、大好きな作家の新刊が出てたので買ってみました。



小川一水「時砂の王」(ハヤカワ文庫、税別600円)

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この書庫でも何度も記事にしてる小川一水の長編時間SF。

自分の中では、新刊が出ると、中身をあまりみずに購入できる数少ない作家の一人です。


そんな彼が初の時間ものにチャレンジ。

あまたあるこのジャンルに著者がどんな味付けをするのか楽しみにしながら詠みました。



26世紀、人類は完全殲滅を狙う謎の機械群に襲われる。

地球を離れ、なんとか防衛から攻勢に転じようとするが、その謎の機械群は時間遡行で過去の人類から滅ぼそうとする。

それに対抗するために生み出された人型人工知性体オーヴィルらは機械群を追って、時代をさかのぼり、弥生時代の日本、卑弥呼が君臨する邪馬台国で迎え撃つことになる。。


・・・というストーリー。



機械群を迎え撃ち、未来(?)の人類滅亡を防ぐため、どんどんと時間をさかのぼっていかねばならなくなるオーヴィルたち。

闘いを重ねていくにしたがって、機械群が人類を襲う目的、彼らへの対抗手段なども徐々に明らかになっていきます。



タイムパラドックスの概念のところはちょっと消化不良かなぁとは思いましたが、相変わらず面白くて一気に読めました。


著者の過去の作品でいえば、「導きの星」に似た系統。

新たなジャンルへの挑戦だからか、「復活の地」や「老ヴォールの惑星」あたりには完成度としては届いてないかなぁ。


でも、しょうがないんですよね。

SFの中のジャンルとして、タイムトラベルをつかった時間SFは数多くありますが、タイムパラドックスの概念のとこって、どの小説も苦労してるって思います。

理論を考えすぎると説明的すぎて、読んでる方も難解に感じるし、きっちり描けないと物語として辻褄があわなくなってしまう。


それを考えたら、この手の時間SFのプロトタイプともいうべきハインラインの「夏への扉」はやっぱ名作だと実感します。

SFとしてはすでに古典の領域で、スケール的な広がりはないにせよ、タイムパラドックスの説明部分の明瞭さに加えて、物語としても簡潔ながらにして高い完成度を誇ってるし。

50年も昔(1957年初刊)に書かれた作品なのに、今だに色あせないどころか、超える作品が出てるかどうかすら定かではありません。

ハードじゃないからSF好きじゃなくても絶対にサクサクいけて、良質のファンタジーを読んでる感じ。

自分は中学生のときに読んで、面白いと思ったし、そして今読んでも絶対に面白く読める作品だと思ってます。

猫好きには特にオススメ・・・ってか必読。