劔岳 点の記

先日、仕事帰りに完成披露試写へ。


劔岳 点の記」

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監督:木村大作  出演:浅野忠信香川照之ほか

明治40年、日本地図完成のために立山連峰劔岳への登頂に挑む、陸軍測量手の柴崎芳太郎(浅野忠信)ら7人の測量隊。

同じ頃、発足間もない日本山岳会も登頂を目指しており、柴崎は日本陸軍の威信にかけて初登頂を厳命される。

柴崎たちは山の案内人、宇治長次郎(香川照之)らの協力で頂への登り口を探すが、そのたびに大自然の厳しさを見せつけられることになる…。

原作はもちろん新田次郎の小説。

「もちろん」とは言いつつ、自分は読んでないけど。。(;^_^A アセアセ・・・

ちなみにタイトルの「点の記」というのは測量するときに記す記録のことだそうです。


物語の中にいろんなドラマもあるし、明治を生きた男たちの気概みたいのを感じれますが、基本的には「前人未到の山に登って、測量する」というただそれだけ。

しかし、ダイナミックな映像でまるで観客の自分たちも一緒に山を登っているかのような臨場感を与えながら、一気に魅せきってしまったのはお見事でした。


監督の木村大作は元々は黒澤映画など数多くの名作に携わってきた名カメラマンで、これが齢70を前にしての初監督作品。

当然のことながら、今回の作品でもカメラマンは兼任。

上映前の舞台挨拶で、「今回の映画の製作にあたっては東映はじめ出資してくれた企業の言うことは一切ききませんでした」と自信満々に言い切るだけのこだわりを作品からもヒシヒシと感じられました。

なにせいまどきの映画には珍しく「順撮り」(脚本の流れどおりに撮影を進める撮り方)で、CGなどの画像処理もなし。

撮影は長期にわたり約200日間、スタッフ全員が山小屋で雑魚寝だったそうです。

もちろん俳優といえど同様で、マネージャーを同伴させず荷物も一人で担いで山を登ってこさせてたんだって。

そのせいか演じ手の表情も物語がすすむにつれて鋭さを増し、ドキュメンタリー映像みたいな迫力が出てました。

アイドルのような客寄せパンダは一切起用せず(宮崎あおいたんは出演してますが)、俳優陣を演技派で固めてたのもよかったです。

浅野忠信って今までニヒルな役どころが多かったけど、今回は熱い思いを秘めた男っぽい役を好演してたし、香川照之は相変わらず文句なしにウマイっす。


厳しかった撮影を踏まえてのことでしょうが、エンドロールの趣向もなかなか粋でした。

これは是非観て確認してほしいところ( ̄ー ̄)ニヤリッ


最近の邦画に多いこぢんまりまとまった人間ドラマをうまい脚本でうならせる映画も悪くないですが、「映像」で魅せるという映画本来の立ち位置にこだわったという点で、すごく映画らしい映画だと思います。

上映終了後に観客から拍手から起きたのはよく分かるなぁ。

そんな映画ってなかなかないっしょ。

変化球なしの全球ストレート勝負。

その愚直さが心地いい。


内容はアッと驚くようなどんでん返しもなく淡々としてる分若者向けではないだろうし、客寄せパンダ的なキャスティングもしてないから、興行として成功するかどうかは??ですが、こういう映画はヒットするように応援したくなっちゃいます。

今から映画賞総なめの予感あるし、そうなって欲しいっす。


上映時間は2時間19分。

6月20日公開予定。


迫力ある映像を味わうためにも、観るならDVDなんてケチなこと考えずに、劇場へ足を運ぶべし!