9月前半は続き物の時代小説の新刊が立て続けに出たと思ったら、後半になって好きなSF作家達の新刊がポンポンと出されて、このところの読書生活は結構充実。
読むのたいへんですが、活字中毒の人間にとってはうれしいことです。
そのせいでトム・ロブ・スミスの「グラーグ57」といった翻訳物が途中まで読んで後回しになってる状態ってのがなんですが。。
ついつい読みやすい方から手をつけちゃうんですよねぇ(;^_^A アセアセ・・・
ということで、普段はほったらかし気味の読書の書庫もちょこちょこと更新できるってもんです。
西暦2083年、超光速粒子推進を実用化したピアノ・ドライブの普及により、人類は太陽系内のすべての惑星に到達していた。 観測プロジェクト“クリーンアップ計画”により発見された謎の新天体2075Aの調査のため、深宇宙探査船DSS‐01“ファルケ”が派遣される。 船長のブレイドをはじめとする搭乗員たちによる観測によって、この星は24年後に地球に迫り壊滅的な被害をもたらすことがわかった。 迫る厄災の報を受けた地球では、様々な対策案が提唱される。 ブレイドの姪である12歳の天才少女・風祭魅波はACOM(人工意識コンパニオン)のマイカとともに、天体物理学者である父・良輔が発案・提唱した驚くべき計画の実現を決意するのだった…。
「詩羽のいる街」が心意気は十分SF魂みたいなのは感じさせつつも表向きは現代小説っぽかったのとは対照的に、今回のはタイトルからも分かるとおり、思い切りハード路線のSF。
ただ、確かに小難しい理論も出てきますが、必ずしもそれがメインってわけでもないし、文章も読みやすいので、敷居はそんなに高くないです。
むしろ、避けることができないカタストロフィーが判明してからの人類の反応の描写とかが物語の中心で、そのあたりは作者の得意分野でもあり、興味深く読めました。
政府のでっちあげだと信用しない人たちもいれば、膨大な予算をかけて地球を救うよりも、人類全体を仮想現実の中にとり込み、実体のない意識だけで生きることを提唱する人物なんかが現れたりもします。
あと、個々の人間に仕えるACOMと人類の関係なんかも描かれてて、「アイの物語」(名作!)のような作者の過去の作品のテーマともかなり関連性を感じました。
ど真ん中直球勝負のハードSFですが、難解な宇宙物理学の理論のとことかは適当に読み流してしまって差し支えないし、それで十分楽しめますよ。
今年発表された日本のSF小説ランキングではベストテンをはずすことはないでしょう。
まぁ、この手の小説の場合は読む人は薦めなくても読まれるでしょうね。
SFの書評書くときによく言ってる気がしますが、逆に普段SF読まない人(相当な読書家でも)はどんだけ薦めても読まなかったりするんで、そういうのはちょっともったいないなって思うんだよなぁ。