山田宗樹「乱心タウン」

最近は読みたい本がちょこちょこ出てて、いろいろ購入してしまってるのですが、レンタル中のDVDもあり、少しずつ読みすすめていってます。

思ったより面白くないのもあったけど、あまり他にネタもないので、久しぶりに読書の書庫も更新。

5周年アンケートでは今までのB級グルメの牙城を映画・読書のエンタメ路線が初めて崩してますからね。

まぁ、映画・読書といっても需要があるのはほとんど映画の方なんでしょうが(^_^; アハハ…


山田宗樹「乱心タウン」(幻冬社 税別1700円)


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超高級住宅街「マナトキオ」の警備員・紀ノ川康樹、26歳。

薄給にもめげず、最上級のセキュリティのために、ゲートの監視と防犯カメラのチェック、1時間に1回の敷地内パトロールを行う。

住人たちは、資産はあるだろうが、クセもある人ばかり。

だが、康樹は今の仕事に誇りを持っている。

ある日、パトロール中に発見した死体を契機に、康樹は住人たちの欲望と妄想に巻き込まれていく。。

山田宗樹の小説読んだのって実は「嫌われ松子の一生」以来久しぶりでした。

主人公?がパトロール中に発見した死体といっても、実はただの老婆の孤独死で、その部分がメインのミステリーってわけではないです。

最新のセキュリティに守られたはずの街で行われたあるイタズラをめぐって、超高級住宅街に住む金持ち連中の滑稽な生態をそれぞれの立場からオムニバス風につづり、成功者だという自負からくる自己肯定や自分勝手さをアイロニーたっぷりにコメディタッチで描いています。

登場人物がかなり多くて、最初は誰が誰だかいちいちページを戻りながら読んでましたが、とにかくでてくる金持ち連中がどれも本当にいけ好かないキャラばかりで、金はあるがゆえに捻じ曲がってしまっている愚かしい部分を、自分のような持たざる読者がフフフーンと上から目線で軽蔑させてくれる痛快さが特徴かな。

また、そこの警備員や出入りの清掃業者といった貧しくとも、誠実に暮らしていく人間たちの生き様も対比として描かれていて、読む側としては彼らの方に感情移入していくようになっています。

現実世界ではこの小説の中のように「金持ち=悪、貧乏人=善」なんてことはないですが、そのへんをあえてステレオタイプに設定することで、人間にとって本当の幸せとは何か?というところをテーマとして分かりやすくしているんでしょう。

登場人物の中には警備員の康樹とつきあおながらも、打算で勘違い金持ちボンボンの方についていってしまいそうになる女性の心境も描かれたりするあたりは、ちょっと説得力あるかもw

もちろん、経済力と幸福を天秤にかけるようなテーマは昔からおとぎ話の世界の定番でもあるけど、この作品の場合は謎の登場人物が最後に仕掛けるオチがちょっとシニカル。

そして、それに意外な人物が一枚噛んでるのには少し驚き。

濃密な人間ドラマを期待すると物足りないでしょうが、舞台コメディの脚本を楽しむ感じでサラサラ~っと読む分にはいいと思います。

ってか、まんま舞台の元ネタにはなりそうな気がするなぁ。