デイヴィッド・グラン「ロスト・シティZ 探検史上最大の謎を追え」

Jリーグが我が名古屋グランパスの優勝で幕を閉じたのはうれしいですが、土日の昼間のサッカー観戦三昧がなくなってしまったので、積んでおいた本を読むようにしようと思います。

ということで、その第一弾。


デイヴィッド・グラン「ロスト・シティZ 探検史上最大の謎を追え」(近藤隆文訳 NHK出版 税別2200円)


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1925年、南米アマゾンのジャングルの奥地にあるという謎の文明都市“Z”を探し求めて、危険地域で消息を絶ったイギリスの探検家パーシー・ハリソン・フォーセット大佐。

伝説の探検家を捜索するため、その後80年以上にわたって多くの探検家たちがアマゾンを訪れ、そして100人以上が原住民の襲撃や厳しい自然環境によって命を落としたと言われる。

著者のデイヴィッド・グランはフォーセットが残した記録や当時の資料から、徹底的にフォーセットの生涯、足跡をたどり、その消息と謎の文明都市“Z”の存在を追う。

80年以上前のフォーセットの探検をドキュメンタリー小説風に描きつつ、その合間合間にフォーセットの足跡をたどる著者のルポタージュ部分が挿入されていく形で進んでいくノンフィクション。

アメリカでは2006年に刊行されてベストセラーになり、ブラッド・ピットが映画化の権利も手に入れたということで話題みたいです。

フォーセット自身がコナン・ドイルの知人で「失われた世界」の主人公のモデルだったりするし、インディ・ジョーンズのモデルもこの人らしいから、あっちの方では結構有名人なんですね。

作中では現代でも秘境と言われるアマゾン奥地に80年以上前のフォーセットたちが挑んでいくところの描写などはかなり克明でいて、それゆえに残酷。

冒険というにはあまりにも過酷すぎて、甘美なロマンティシズムなんて全く感じられないほど凄惨な場面も数多く登場します。

道なき道を進むだけでなく、そこには厳しい天候や飢えもあり、さらに他の地域にはいないような原生動物が襲ってきます。

大型の捕食動物も怖いけど、本当に恐ろしいのはそれらよりもずっと小型動物や虫みたいなの。

吸血コウモリ、猛毒のサンゴヘビ、一匹で100人殺せる毒をもつモウドクフキヤガエル、吸血ブヨ、皮膚を刺して病変を起こすピウム、尿道から入ってトゲをたててしがみつく(イタソー。・゚゚・(>_<;)・゚゚・。)魚カンディル、服やリュックサックを一晩でズタズタにする葉切蟻、ヒルのように体に貼りつくマダニ、人体組織を食べつくすアカツツガムシ、シアン化合物を分泌するヤスデマラリアを媒介する蚊、人間の皮膚に卵を産みつけるハエのベルニ(皮膚の中で孵化して蛆虫が体内でゾロゾロになる)などなど。

人の唇を刺して、クルーズトリパノソーマという原虫を移すサシガメってのもいて、こいつに刺されると無事ジャングルから生還したと思っても、20年後に心臓や脳が肥大して、死亡することになったりするっていうから、ホラー映画も真っ青な探検っていう表現でも決して大げさじゃないと思います。

作中では蚊帳とかハンモックとかあっても、気休め程度にもならない状況が描かれています。

これに加えて、もちろんまだまだ未開の地にいるインディオの部族も突如として襲ってきたりするから、満足な装備もない当時の探検家たちは満足に眠ることすらできない道行きだったようです。

っつーか、いくら冒険が好きだからって、何人もの仲間を犠牲にしながらも、こんなところに何度も行く気になるフォーセットってアブナい奴すぎる。。

ハート・ロッカー」の主人公みたいなある種の危険ジャンキーなんでしょうね。

フォーセットの最期や“Z”の存在についてもある程度の推測できる地点までは到達しているし、ドキュメンタリーとして面白く読めました。

まぁ、当時のアマゾンを探検することがどれだけ恐ろしいことだったかということの方が強く印象に残っちゃったんですけどね(^_^;)

「冒険家ってロマンはあるけど、やっぱタイヘンやねぇ。。」と再認識せざるをえませんでした。

ブラピがフォーセット大佐を演じる映画も再来年に公開予定らしいけど、どんな感じになるのか是非観てみたくなりました。

冒険小説好きな人なら一読を。