小川一水「天冥の標Ⅴ 羊と猿と百掬の銀河」

こんばんわ。

Jリーグが終わってしまって、土日の午後がポッカリと空白って感じのあややっくすです。

というわけで、久しぶりに読書の書庫を更新しますね。


小川一水「天冥の標Ⅴ 羊と猿と百掬の銀河」(ハヤカワ文庫)


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西暦2349年、小惑星バラス。

地下の野菜農場を営む40代の農夫、タック・ヴァンディは、調子の悪い環境制御装置、星間生鮮食品チェーンの進出、そして反抗期を迎えた一人娘座リーかの扱いに思い悩む日々だった。

そんな日常は地球から来た学者アニーとの出会いで微妙に変化していくが。。

その6000万年前、地球から遠く離れた惑星の海底に繁茂する原始サンゴ虫の中で、ふと何かの自我が覚醒した。

「天冥の標」シリーズ第5巻。

全部で10巻の予定だから巻数的にはちょうど折り返し地点。

シリーズなのになにせ4巻までの内容はちょっとずつつながりを感じさせるような用語が出てくるだけで、まるで別々の物語を描いているような展開でカタルシスがなかったですが、ここへきてようやく全体的な構図があきらかになってきつつあります。

この巻ではタックの農場経営の描写と「被展開体」という存在でシリーズ全体の狂言回し的な役割でもあろうダダーことノルルスカインの物語が並行して描かれているけど、シリーズの大きな鍵を握っているのは作者の過去の作品である「導きの星」にも似たノルルスカインの物語の方。

シリーズの今までの巻を貫く謎解きを垣間見せながら、空間的にも時系列的にも一気にスケールアップした感がありました。

まだまだ誰が味方で誰が敵なのかも分からないし、大きく広げすぎた風呂敷をちゃんと収斂させていけるのか疑問に思わないではないけど、前巻まででちょっとシリーズを読み続けていくモチベーションが落ちていた自分にとってもまた続刊を読んでいきたい気持ちにはなれました。

シリーズの折り返しとしては悪くないまとめ方だったと思います。

次の巻はまた半年後くらいかな?