篠田節子「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」

引継ぎも一段落して、仕事中ですがちょっと時間があるので、久しぶりに読書の書庫を更新。


篠田節子「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」(文芸春秋刊)


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近未来(?)を舞台にしたちょっとSFチックな短編集。


「深海のEEL」

駿河湾から巨大なウナギが引き上げられる。そのウナギを食べた人間が食中毒になったことから、ウナギにはレアメタルが含まれていることが判明。ウナギからレアメタルを取り出すために、莫大な費用をかけて調査するが。。


「豚と人骨」

東京ど真ん中のマンションの建築現場から大量の人骨がみつかり、縄文時代の実態を解き明かす考古学的な大発見かと騒がれる。しかし、そこに埋まっていた骨にはある秘密があり・・・。


「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」

田舎町の小さなハイテク工場。事務員の女性が女性が働いていると、40センチ四方のラジコン、おもちゃの車が、なぜか追っかけてくる。盗撮を疑い、警察を呼んで調べてもらってもコントローラーを持った不審な男などは見つからない。はたして真相は?


「エデン」

北の方の外国の地で合成麻薬を使った日本人の青年が、警察に逮捕されるのを恐れて逃げた挙句、一夜を共にした女性に導かれ、ある村へたどり着く。そこは現代文明の娯楽などとは切り離され、30年以上トンネルを掘り続けるためだけの集落があり、青年も強制的にトンネル堀りに協力させられる。禁欲的な生活から逃れるために、何度も脱走を試みるが、そのたびに連れ帰され、さらに時がすぎていき。。

という4編が収録。

「深海のEEL」はシェッツィングの「深海のYrr」、表題作の「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」は言わずと知れたディックの「アンドロイドは電気羊の夢をみるか?」をパロったタイトルですね。

自分もそのタイトルに興味をそそられて手にとったわけですが(^_^;)

どれも行き過ぎた科学や資本主義のに踊らされる人間模様を読みやすく描きつつ、物語全体を俯瞰したときにはアイロニーを感じさせるものになっていました。

表題作は意外に後味さわやか。

個人的には「家族」とか「生きる意味」とか哲学的な問いも投げかけてくるような「エデン」が好みでした。

話のスジとしてはデジャブ感もあるけどね。

トータルしてみて、インパクトはそれほどないですが、割とサクサク読めて、そこそこ楽しめる本だと思います。