宮内悠介「盤上の夜」

平日なかなかブログを更新できないので、今のうちにたまには読書の書庫も更新。

宮内悠介「盤上の夜」(東京創元社刊 税別1600円)


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囲碁や将棋、麻雀、古代チェス、チェッカーなど盤上遊戯、卓上遊戯を題材にした奇譚集。

いずれも一人のジャーナリストが取材を通じて書いているという体裁になっています。

四肢を失い、囲碁盤を感覚器とするようになった若き女流棋士の栄光を綴った表題作、「盤上の夜」。

チェッカーで42年間無敗のチャンプだった男の物語、「人間の王」。

麻雀のタイトル戦に挑んだ女新興宗教家のありえない打ち方で勝利していく様を描いた、「清められた卓」。

チェスの起源ともいわれるチャトランガ発祥と仏教の勃興期の交錯を思わせる、「象を飛ばした王子」。

将棋をめぐり二人の兄弟と一人の女の相克の一編、「千年の虚空」。

表題作「盤上の夜」の後日譚ともいうべき、「原爆の局」

以上の6篇が収録。

いろんなテーブルゲームがでてきますが、特にルールは知らなくても大丈夫な感じ。

チェッカーとかチャトランガなんて知ってる人の方が少ないだろうしw

ゲームの中身について深い知識があれば、その「ありえなさ感」はより感じれるかもしれないし、勝負事の細かい描写が出てこないことに物足りなさを感じる部分もちょっとはあるかな。

あえて言うなら、「清められた卓」は麻雀の知識がある程度あった方がいいとは思います。

テーブルゲームを素材にしてその世界観の中で駒や牌と対話ができる人間たちの存在が大きなテーマ。

一種の言語SFというふうにとらえた方がいいでしょうね。

個人的には表題作以外では「人間の王」と「象を飛ばした王子」が好みでした。

チェッカーやチャトランガのルールを知らないから、リアリティがなくてもよく分からないってだけかもしれませんがw