佐藤究「Ank:a mirroring ape」

ブログ更新するのめっちゃ久しぶりですが、忘れていたわけではないです(;´∀`)

佐藤究「Ank:a mirroring ape」(講談社


イメージ 1

2026年、多数の死者を出した京都暴動(キョート・ライオット)。
ウィルス、病原菌、化学物質が原因ではない。そしてテロ攻撃の可能性もない。
人類が初めてまみえる災厄は、なぜ起こったのか。
発端はたった一頭の類人猿(エイプ)、東アフリカからきた「アンク(鏡)」という名のチンパンジーだった。

AI研究から転身した世界的天才ダニエル・キュイが創設した霊長類研究施設「京都ムーンウォッチャーズ・プロジェクト」、通称KMWP。
センター長を務める鈴木望にとって、霊長類研究とは、なぜ唯一人間だけが言語や意識を獲得できたのか、ひいては、どうやって我々が生まれたのかを知るためのものだった。
災厄を引き起こした「アンク」にその鍵をみた望は、最悪の状況下、たった一人渦中に身を投じる――。

チンパンジーの研究から人類の進化の謎を解き明かそうとする研究者を主人公にした近未来パニックSFだけど、類人猿の生態の蘊蓄がなかなか興味深かったです。

物語後半は研究所でのちょっとした出来事から一気に凄惨なシーンの描写の連続になっていきますが、その辺苦手な人は適当に読み飛ばしてもいいかな。

時系列がいったりきたりしてもそれほど混乱はしなかったけど、ちょっと多すぎだったとは思う。

鏡に映った姿を自分だと認識できる自己鏡像認知能力というのを人間以外でもっているのはチンパンジーボノボ、ゴリラ、オラウータンだけなんですね。(イルカも持ってるかもしれないらしいけど)

知らなかった。

物語でもこの能力がキーになってきます。

暴動の原因となる核心の部分の理論はフムフムとうなずけるようなリアリティはなかったけど、物語としては面白かったし、スケールの大きなテーマに挑んだ作者の意気込みは感じ取れました。

欠点はあっても、かつてない視点の新鮮さがよかったです。