高野和明「ジェノサイド」

今年はなんとか月に1冊ペースでは記事を書いておきたい読書の書庫。

とりあえず今月の分を更新。

高野和明「ジェノサイド」(角川書店 税別1800円)


イメージ 1

急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。

創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。

ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。

同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。

暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。

事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。

イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。

作者の本は今まで「13階段」しか読んでなかったけど、本屋で表紙をみかけて「なかなか面白そう」だと判断して、購入。

最初は別々に進んでいく日本とアフリカでの物語。

それぞれの主人公が指令を受ける父や軍の真の目的をしらないまま進んでいく序盤から、徐々にその真実が明らかになるにつれ、二つの物語がつながっていきます。

研人が父の研究をひきついで創薬していくくだりは専門知識が難しくてついていけないところもあったけど、そのほかの部分では読む側を一気に引き込んでいくような怒涛の展開の連続で十分堪能できました。

合間合間に挿入される現代アフリカの地域紛争の現状やアメリカの支配階級の腐敗っぷりなども興味深かったです。

合衆国大統領として出てくるバーンズって、もろブッシュ(息子の方)だし。

アクションサスペンス風のノリで進んでいきますが、後半で明らかになる真のテーマはかなり壮大で、むしろSF的。

途中から登場してくる○○○や○○の能力がハンパなく、ちょっとやりすぎな感もないではないけど、彼らを害しようとしてくる連中の目論見の遥か上をいってしまうところでは、カタルシスも感じました。

なにより今までにない発想が新鮮だったし、いろいろ張り巡らされた伏線の回収も見事。

エンターテインメント小説としての完成度はかなり高いと思います。

いや~面白かった。

こんな小説、もっと読みたいなぁ。