塩野七生「ギリシア人の物語Ⅲ 新しき力」

このところ読みたい本がいろいろあるので、珍しく10日もあけずに更新します。

塩野七生ギリシア人の物語Ⅲ 新しき力」


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混迷のギリシア世界を弱冠二十歳で統一し、ペルシア帝国制覇へと向かったマケドニア王アレクサンダー。

トルコ、中東、中央アジアを次々と征服し、ついにはインドに至るまでの大帝国を築きあげるも三十二歳で夭逝――。

夢見るように生き、燃え尽きるように死んだ若き天才、その烈しい生涯に肉薄した歴史大作。

塩野七生の「ギリシア人の物語」シリーズ最終巻。

この巻の前半ではポリスの覇権がスパルタからテーベに移り、さらにマケドニアがフィリッポス2世の元で台頭していく様子、後半ではその息子アレクサンドロスの東征まで描かれていました。

とりあえず、後々「大王」と呼ばれるだけあって、「アレクサンドロスってスゲ~」って再認識。

ラノベ異世界転生ものでチートになった主人公が無双する中2病の妄想を現実世界でやっちゃってる感じ。

21歳で父親が暗殺されて後をついだあとから会戦では全戦全勝。

戦場にあっては常に平の兵士たちと同じ境遇に身を置き、そして戦術的に一番それが効果的だからといって、常に自分が一番先頭にたって戦うとかファンタジー小説の世界でしょ。

しかもそれで、ギリシアからインドの西端にまたがる広大な地域を転戦し続けて、10年程度で平らげてしまってるんだから。

若死にしすぎて後継者を作れなかったのは致し方ないけど、それでもどんな人の人生よりドラマティックだったと思います。

読んでる間は史実なのにこちらも血沸き肉躍る感じでした。


塩野七生の著作は大長編の「ローマ人の物語」のシリーズも含めほとんど読んでいますが、これが最後の作品となるらしいです。

御年80歳で積み上げた業績を考えれば、もうやり残したことはないくらいの達成感もあるんでしょうね。

どれも本当に面白かったです。

もう彼女の作品が読めなくなるのは残念ですが、今までの素晴らしい研鑽に心から拍手を贈りたいです。